インフィニティさんとコウお兄さん
ランプの灯によって壁に浮かびあがる二つ絡んだ影。
女の長い髪と、男の背から生えた羽根がひときわ大きく動く。
「…不思議な奴」
男が口を開く。橙色の灯に照らされる、白い肌と赤い瞳。
「あら、どうして?」
ぼんやりと、辛うじて女性であると判別できる影から声が聞こえる。
「そんな体なのに、抱いた感触は人間と全く同じだ、味もな」
血に塗れた唇を指先で拭い、軽く笑う。
壁の影が少し揺れる。
「…人間以外に抱かれた事は?」
「あるわ。皆、私の大切な思い出よ。」
「……俺は喰った奴の事はほとんど覚えてない
だが、お前の事は暫く忘れられなさそうだな
…それもいずれは薄れるんだろうけど」
男の羽根が揺れ、意地の悪い笑顔を浮かべて影を抱き寄せる。
「私の思い出は消えないわ。」
彼女は、少しだけ笑ったように見えた。
壁に投影される二つの絡んだ影。
長い髪の毛が散る花びらと見え、黒い花のようになる影。