- 作者: 京極夏彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/09/05
- メディア: 文庫
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流石に凶器並みの厚さを誇るだけあって読むのには時間がかかるわけですが。その時間(具体的には朝食を取る時間)を注ぎ込んでまで続きを読みたくなる。
以下核心に触れない程度にネタバレに触れます。
キーワードは「夢」。「狂骨」という妖怪は井戸から出てくる。枯れた井戸はあの世との境界なのだそうで。
京極堂シリーズ3作目、という事で前2作とのつながり(京極堂が久保*1の葬式をしたり)があったりしますが少しだけ毛色が違う。
妖怪やら幽霊とかなんやらの不思議なものと事件をひっ絡めた小説というのは同じなんですが今回は心理学とか精神分析やらフロイトやら*2科学の皮を被った妖怪みたいな奴らも出てきます。
参考文献を積み上げたうえの幻想。確かに"はなはだしいまでのリアル"。
朱美さんの記憶が混在する所は(具体的な話は伏せますが)"作られた記憶"なのかなあと早い段階で気が付いた。これも源流はフロイトにあるらしいですし。
あと今回は今まで端役でちょっとずつ出てきた「いさま屋」こと伊佐間(釣り堀の主人でやっぱり変人)にもスポットが当たる。魍魎の匣における木場の旦那みたいな感じというか。
「不思議な事など何もないのだよ」というおなじみの決め台詞は"種が分かれば不思議じゃない"意味があるんじゃあなかろうかとも思ったりした。この事件だって種や背景が分かってしまえば不思議でもなんでもない。しかしこれは小説ならではのトリック?だなー。
あとは文庫版なので解説があるわけですがその中に「キャラ萌え」という単語が出てきたので不覚にもなるほどと思ったりもした。
知識欲と「不思議な話*3を知りたい」欲を同時に刺激し、その上でどうにもじめじめしている関口や妙に明るくて子供っぽい榎木津、正義感に繊細な肉付けをしたような木場、ひょうひょうとした伊佐間、快闊に行動する敦子、そして様々な知識とハッタリで憑き物落としをする京極堂が動き回るのを見て楽しむ。
なんとも私の好みというか相性がいい。あ、ちなみに私は榎木津の言動が好きです。